さらばインド。

ついにこの時が来た。
いつかはやって来ることは当然わかっていたものの、実際に訪れてしまった。



インドを離れる時が。




ああ、インド。





今朝、鉄道でインドの首都デリーに着き、そのまま安宿街であるパハール・ガンジへ。
ホテルをチェック・インして洗濯をし、エア・インディアのオフィスに飛行機のチケットを手配しに行った。
そして、なんと明日の便しかおれには残されていないことが判明。



急すぎる。
あと1泊しかできない。



しかし、おれは日本に帰らねばならない。
おれはそのチケットを買った。






エア・インディアのあるコンノート・プレイスからパハール・ガンジまで歩く。



その間に見た、いつものインドの風景。





ラクションの嵐・最悪の交通渋滞



うざいくらいしつこいリキシャー・ワーラーたち



何度もひどい目に遭わされたはずの客引き



そしていつまでも食い下がることなく手を差し伸べつづける物乞いの老女・子供たち





そんな、いつもなら素通りしてしまうようなものにさえ、何故かこのときばかりは愛着すら覚え、感慨深い思いを覚えずにはいられなかった。





ああ、インド。





ついにおまえと離れるときがやってきた。
一体おまえは何なんだ。



おれを欺き、騙し、驚愕させ、コテンパンにしたかと思えば、いきなり優しい顔になり、おれを癒し、包み込むような素振りをみせる。
そんなおまえを憎んでも憎みきれないうちに、いつの間にかしっかりおまえのペースにハマっている。



初めてインドに来たとき、その全てに驚き、新鮮さを感じ、もっと知りたい、もっと近づきたいと思いながら、おれはおまえを離れた。
再びここを訪れてみて、おれはおまえのことがますます判り、判らなくなった。



そして、漠然と、しかし確信をもって言えること。




おれはまたおまえに会いにくるだろう。




再びインドを訪れるだろう。






ひとまず一旦、お別れだぜ。





ネット屋から通りを見渡せば、溢れんばかりのヒト・モノ・ウシ・ゴミ・・・・。
これからおれは店を出て、その流れの一部となる。
そんなことも、これでとりあえずは、最後か。




柄にもないことを言わせてもらえば、おれは今、とても淋しい。




日本に帰るなんて信じられない。