深夜0時をまわるころ、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」の終盤も終盤、最終頁までの残り10ページほどを、終局に向けての展開に胸を高鳴らせながら読みふけっているときに、携帯が鳴る。
背後から襟首を掴んで引きずり出されるかの如く、高揚した気分を一瞬で現実の下に晒した忌々しいバイブ音を発する携帯を睨みつつ、電話に出る。
それは先日ドラマーとして加入したバンドのメンバーからの「ヒマだからとりあえず来い」という旨の着信だった。




「携帯の電源切っときゃよかった」


そんな悔恨の念を抱きながら車を走らせ、待ち合わせ場所に向かうおれ。



それはさておき今回、コテコテなロックを愛する我がバンド・メンバーにおれの趣味を少しでもわかってもらおうと、様々なCDを持参してドライブしながら聞かせてみた。


以下、各ミュージシャンを聞かせた後の彼等のリアクションである。



RADIOHEAD → 「CREEP以外はクソだろ」
AT THE DRIVE-IN → 「うるさい」
THIRD EYE BLIND → 「ドラゴンアッシュみたいだね」
!!! → 「・・・他のCD聴こうぜ」
ZAZEN BOYS → 「ヴォーカルが曲の雰囲気を台無しにしてると思う」



一瞬、ほんの一瞬だが確実に「バンド脱退」の文字がおれの脳裏に浮かんだ。