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今日の明け方、「どうしてもチキンラーメンに生卵をのせて食べたい症候群」にふいに襲われたおれは、チキンラーメンをゲットするためコンビニへ買いに出かけることにする。
しかし、財布の中身にはおれを愕然とさせる現実があった。
残金82円。
これでチキンラーメンが買えるかどうかは微妙なところだ。
でも、そんな現実とは無関係に腹の底からこみ上げるおれの食欲。
身体がチキンラーメンを欲している。
どうしても・・・食べたい・・・!!
なけなしのコインを握り締め、おれは近所のコンビニへ出掛けた。
太陽がまだ顔出す前の時刻、店内に客の姿は無い。
おれは店に入るなり、まっすぐにラーメンコーナーに向かう。
そこで見たのは・・・・「チキンラーメン1袋86円」の表示。
なんてこった・・・4円足らねぇ・・・・。
「神は我を見放したのだ。きっとそうに違いない。」
冷たく、厳然と目の前に横たわる現実に、おれはそう呟いた。
失意のまま部屋帰り、空腹を堪えながら、寝るのか・・・。
いや、待てよ・・・足りないのは4円だけだ・・・これだけで、おれは夢を諦めるのか・・・。
あんなに壮大だったチキンラーメンへの思いが・・・こんな4円ぽっちで・・・・。
そのとき、おれの中で何かがはじけた。
「コンビニの店員だって・・・同じ人間やないか・・・」
おれはチキンラーメン1袋とポケットの中の82円を握り締め、レジへ向かった。
カウンター内に立っていたのは初老の店員。恐らくオーナーだろう。
商品を差し出し、店員がレジを打ちながら「86円です」と言い終わらない間に、おれは行動に出た。
ポケットをさぐりながら、
「あれ?あれ?おかしいな・・・あれれ?」
「?」としか表現できない顔でおれを見つめるオーナー。
すかさずおれは必殺ワードをキメる。
「あれ・・・82円しかないや・・・どうしよう」
そう言ってオーナーの目を見つめるおれ。
彼の目に、おれの瞳は捨てられた子犬のそれのように映ったに違いない。
彼は目線をレジに落としながらこう言った。
「ああ・・・4円・・・いいですよ・・・そのくらい」
人間同士、腹を割って話せば分かり合えるのだ。