日本について。

日本人であることに時々恥ずかしさを覚える。この国、日本は少なからずおかしい。
日本文化を否定しているわけではない。というか日本文化なんてろくに知らない。
映画「ラスト・サムライ」が海外で賞賛されているというニュースでどこかのコメンテーターが言っていた。
「海外で評価されるのはサムライ時代の日本ばかり」
別に海外で評価されるような国にしたい、とかたいそうなことは言わない。
おれは単にアイデンテティが欲しい。
「自分は日本人であり、日本の文化のもと生きている。」そういう風に自覚して胸張って言えるか?絶対言えねーよ。
過去に数回海外旅行をしたが、訪れた国々で出会った人によく問われる。「日本ってどういうところ?」 一瞬回答に詰まる。あまりに自分の国について無知な自分。
異国を訪れて初めてわかった。自分がいかに宙ぶらりんな状態なのか。


「近頃の若者は・・・」大人たちは言う。「敬語を話せない」「すぐキレる」「何を考えてるかわからない」
分断される若年層と熟年層。
ここからも「ワビサビ」に代表される「伝統的な日本文化が死滅しかけている」ことを理解するのは容易だ。
結果として拠り所を無くして宙ぶらりんな人々の心。
共通項として在るべき「文化」が崩壊し、ばらばらになって噛み合わない他人と自分。
日常に疲弊した精神が頼るべきものはなく、その暴走の果てに起きる不幸な事件の数々。
おれも日頃の他愛も無い事柄で「こういうとき、どうすべきかわからない」と一瞬立ち尽くすことはままある。
この国がいつからそうなったのかはわからないが、少なくともおれが生まれるずっと前からその傾向は続いてるんだろう。
ブラウン管やスクリーン、文章の中で描かれる「在りし日の日本」。
それは何か、「とても遠くて実感が湧かないもの」としてしか受け取れない。同じ国の住人のはずなのに。
その日本はおれらにとってはもう「知らない国」だ。


さらにおれを苦悩させるのが、文化を亡くしてできたその隙間に溜まった膿の存在。
もううんざりだ。
マスメディア、企業によって生み出される糞みたいな即席文化。
他の国からパクったものでうめつくされた街。
それに何の疑いもなく心酔した者によって繰り返されるコピーのコピー。
出来は良くても所詮は猿マネ自己満足。よっぽど工夫し変化させない限り、オリジナルを超えられるわけはない。
CMを見れば欧米人だらけ。自分と似ても似つかない人種を崇拝するような世間の風潮。
何も気付かず、たとえ気付いても声高にはせず、それらに翻弄され、踊らされて右往左往する人々。
目も当てられない。
おれらの国でしかできないオリジナルはどこにある?