知り合いから「9月にライブやるんだけど、1バンド急にキャンセルがあって枠が空いてるのでよかったら出ないか」という旨の連絡を受ける。
仮にもバンドをやってる身なので、そのことをメンバーに連絡するおれ。
基本的に、我がバンドはギター&ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム(おれ)という4人編成である。
とりあえずギター&ヴォーカルの家にて、ライブについて語る。
「持ち時間30分らしいけど、曲、足らなくねぇ?」 「ってか、ライブできるの?今の状態で」 「チケットのノルマが25枚だけどさばけるんかな」など、問題は山積している。
景気付けにNIRVANAのライブビデオを観て英気を養う。
「ライブで一番大切なのは魂だ」
そう確信する。



そこへ、部活の合宿で三重県にいるギター担当から電話が入る。
「おれは、絶対演奏面で妥協したくねぇ。だからもしライブ出るなら練習の鬼になる」
彼は電話口でこう言い切った。
「魂だけに頼って演奏を軽視する傾向」を、ぶった切るギタリストの意見を聞き、バンド内に緊張感が高まる。
それと同時に、明確な目標ができて高まるモチベーション。



その時、バンドは確実に「ライブに向けて」動き出していた。





ただ、ベーシストと連絡が取れない。
彼に参加の意向を問わない限り、話は先に進まないのだ。



そして、数時間後。
ようやくベーシストと連絡がつく。


そんな彼の一言。



「ライブ? 出ないよ。だっておれベース弾けねぇもん」



全ては水泡に帰した。